苺の葉は、幾色もの緑を何度も重ねて描かれ、 明るい色の葉脈とともに、葉の質感をいきいきと表しています。 その葉の下に、かわいく並んだ苺達はとても嬉しそう。 何か楽しいリズムを刻んでいるような。 愛らしい苺を描きながら、幼子を見つめる母のように春名芙蓉は目を細め、 丹念に何度も色を重ねていったのです。 小さな白い苺の花を、葉の上に描いたときの彼女の高鳴りが伝わるでしょうか。
黄色とグリーンの色づかいが、とても目に鮮やかなシリーズです。 心を楽しませてくれる身近な花を、食器として提案してみました。
野に咲く、小さな小さな花。見落としてしまいそうなちっぽけなつゆ草。そんな小さな存在にも、自然は目の醒めるような鮮やかな色を与えています。その不思議さに感嘆し、小さな花に宿る、大きな自然の愛に、春名芙蓉は目を見張ります。 「美しいブルー。あくまでも深いブルー。自然の愛のたまものであるこの美しい色を、 表現したい。」そんな思いを込めて、その青い花は、芯にいたるまで丹念に描き込みました。 そっと野に咲く、目立たぬ花を、 じっと見つめる春名芙蓉の温かいまなざしが、心にしみてきます。
庭に咲くホワイトローズを見たとき、春名芙蓉は、 胸のときめきを押さえることが出来ませんでした。 縁を飾るたえなるピンクの彩りが、花びらの白に溶け込んでいく薔薇の姿は、 言葉を失うほど美しく、彼女の胸を高鳴らせました。 天に咲く花のような、高貴さと優雅さをそなえたこの花を描くため、 その日から彼女は全身全霊を打ち込んでいきました。白とピンクがたおやかなる調和を 奏でるホワイトローズの器は、春名芙蓉の感動の頂(いただき)から生まれてきました。
春名芙蓉は富士と向き合い、大いなる美しさの中に全てを癒す愛を見、 この山の持つ偉大なエネルギーを伝えることに情熱を傾けてきました。 春名芙蓉が描く富士は、天から流れ落ちるように広がる秀麗なる山容を、 時に優美、雄々しく、天空に浮かび上がらせ、湖水に影を映し出します。 意匠を凝らした技の粋を極めて創み出された「富士山」は、 さまざまな限界や常識を打破って世に出されました。